幻の料理

飲食店での食品衛生というのは中々に難儀なものである。家庭なら100回に1回の食あたりがあっても3カ月おきなので特に免疫が弱っている人でなければ許容できるが、飲食店で大規模に起こしてしまえば取り潰されるので、3カ月おきに食中毒事件を起こしていては経営のしようがない。あるいは100人の客に1人とするなら、よほど寂れていなければ少なくとも毎週食中毒を出す計算になり非常によろしくない。

 

この食中毒というのは非常に重大なもので、時には一つの料理を法律にしてまでご禁制にすることがある。そう、レバ刺しである。

古くから注意勧告はされていたのだが東日本大震災のニュースでもちきりだった2011年4月にO157による死者も出した食中毒事件があり、その時の検査で内部にその細菌がいてトリミングではどうにもならないということで翌年7月より禁止となった。

 

自分はその時小学5年や6年で、肝臓を食べる事どころか肉食自体を嫌っていた(今でも横紋筋ではないホルモン全体に忌避感がある)時期であったため食べずじまいのまま終売、ご禁制となるに至った。

 

ユッケは好きなのだが、これもついでに規制が厳しくなったこともあり食べづらくなってしまった。魚肉の生食は大好きだが、今は獣肉を生食するといえば生ハム程度である。牛の生ハムをパックしてごま油を添えた商品が近くのあるスーパーで売っているので、見かけたら入手して食べている。

 

今となってはどんな味だったかは、法改正で解禁されない限り謎のままの幻の料理である。好きでないものとはいえ食べられないと言われれば食べたくなるものだが、実際問題として入手できないものはどうしようもない。