医者の数の地域格差

新型コロナウイルスの蔓延で滅茶苦茶になる前は医療の地域格差がひとつ大きな問題としてあった。医療従事者の少ない地域が困っているので多い場所から持ってこよう、というのである。

 

その供給元として期待されていたのはやはり都会が中心で、例えば人口あたりの医者の数をひとつ小腸として見ると東京や京都の中心部が多い。大阪なども人口の多さもあるがなかなか充実しているので時間をかけてそこから引き抜く予定になっていた。

 

ただ都会といっても、関東近郊は案外少ない。埼玉千葉などは1,2を争う少なさで神奈川も下位になる。逆に西日本の地方県、特に徳島などは人口のわりに充実している。

 

これはやはり人口の推移によるものと私は考えている。何事もなければ6年かけて育成された医師は特に何事もなければ40年は働く。大学と病院の繋がりがあるため大学の近場での就職が多く、その勝手知ったる地元で開業をすればその場所に居着くこととなる。

 

旧制のものを除けば医大というものは戦後直ぐに設置され、医大がなかった県は70年代に1県1医大構想で置かれている。その経緯を考えると戦後に人口が急増したため現在の人口に必要なぶん設置できなかった埼玉や千葉が苦しいのも自然な結果だろうか。特に埼玉などは国公立の大学の医学部がない。今の埼玉の人口はざっと740万で、70年にはその半分しか無かったという。人口400万足らずで東京が近いとなれば大学が私大1個のまま放置されたことも妥当なのだろうか。

 

それでも平時なら東京に林立している医大の卒業者の登用や東京の病院への受診で対処できたたのであろうけれど、コロナで東京が県境の内の事さえ扱いきれなくなりつつある現状では相当苦労しつつあるようだ。意外と県境のもつ意味は重く、自前で抱えておくに越したことはないと分かった2020年代初頭であった。