語呂合わせ考

世の中色々な受験勉強論があり、その中でもひとつ有力な暗記法として語呂合わせが存在する。

 

説明の必要もないだろうが元素記号の『水兵リーベ僕の船~』など覚えるべき事柄の頭文字を別の文に仕立てたものや『いやでござんすペリー来航』などの年号を覚えるものである。かの悪名高き、どこぞの予備校講師が最悪だと黒板に当たり散らかしていた速さ・距離・時間の関係を表したTO図『はじき』もその部類であろう。

 

暗記項目に語呂合わせを用いる時は、覚えるべき物量が膨大すぎることへの配慮が必要である。年号暗記はともかく事件などの名前をまとめて語呂合わせにして覚えるには、その頭文字を覚えるための語呂合わせの暗記とあわせて、語呂合わせで覚えた頭文字さえあれば思い出せる程度にはその中身を覚えておく必要がある。

 

ひとつふたつならまだしも、例えば1回の試験で10も20もあるものを語呂合わせに頼ろうとすると苦しくなる。それにどの語呂合わせがどの事柄を指すかも忘れがちになる。なんせ日本語のひらがなはざっくり50音、『ず』とか『ぷ』とか頭文字になりにくそうな濁音やらを合わせても100には届かない。

 

公式や原理の類を暗記する際は覚えるべき量こそ多くないものの当座をしのぐための姑息な、一時しのぎの手段としてのみ使うべきである。

 

それらは上位の概念を理解する取っ掛かりになっていることが多いが、理解(何をもって理解とするかは難しいが)なく目の前のテストを乗り切ると非常に意欲が高い人以外はそれで満足して学習を止めてしまう。そのために数年後、語呂合わせで難易度を下げても運用できないような公式が現れて苦しむことがほぼ確定する。

 

語呂合わせの多用はデメリットばかりが大きいため行わないが、数個の頻出用語群や概念を当座のテストの為に覚えるためには有用であることは確かである。正直にテキストの読み込み、書き取り、演習などで覚えるのがよいが時にはこのような飛び道具をつかうのもいいだろう。