大学の思い出:化学実習-収率120%の奇跡!

去年の緊急事態宣言(無印)により、2年次にあったはずの実験系の実習はほとんどが消し飛んだ。一部は映像配信により行ったこととしたものの、実習というのは自分の手で見て触れて嗅いで聴いて時には味わって、実際に習うからこそ実習なのである。

 

これは私感だが、ものに触れず画面越しに行う実習というものは片手落ちどころか両手両足に追加で首の1つくらいは落ちているのでないか。先生方は厳しい状況下で最大限の教育効果を挙げようと努力なさっていたように思うが、それでも将来的な不安がある。

 

さて、コロナ前には対面実習の制限などなかったので化学の実験道具を使った実験が行われた。誰も彼も中高で実験をよくした訳ではないので、実験を行う能力を確実につける意図があったのだろう。

 

我々学生はほぼ素人であるのでどうしても操作に手間がかかる。また人数に対し共用するものの数が足りていないため中々時間がかかるのだが、それでも数回かけてアスパルテームの合成を集大成として行った。

 

1回1回の一区切りとして中間産物の重量測定が行われてその理論値との誤差とその原因が課される。産物は試薬の器壁への付着やろ紙への吸着または反応の不全などで5%は目減りするのが普通であり、時にはこぼして収率0%などという班もある。この場合先生が用意した同じ物質で実習を続けることとなる。

 

しかし、時には反応で得られるはずの理論値よりずっと多い120%などといった数値が得られることもある。反応を完全に行い全くロスなく収集したとしても理論値の100%を上回るはずがなく、試薬の重量測定の誤差で説明するにも大きすぎる。

 

もちろん何か非科学的な奇跡が起きたのではなく、単に吸引濾過による乾燥が甘かっただけの話である。とりあえず体裁を整えて提出して、机の中で1週間乾かしておけば目減りして割の単位で減っているのが常であった。

 

化学実験を本職とする先生からすれば我慢ならないような出来であったろうが、良や優の単位を多く出してくれるやさしい先生がたであったことだ。