表札

物心つく前から同じ一軒家に住んでいる私は、家に住んだら自分の名字が書かれた表札を道路に面して出すことに全く何の違和感も持っていない。自分の家も出している、近所の家もほぼ出している、ならば一般的な住宅地ではだいたい出ているだろう、という考えだ。

 

しかし、暇なときに色々な住宅地を自転車で徘徊していると、ガラの良い所や逆に悪い所、あるいは集合住宅の類では案外出ていないことが多い。

 

特に集合住宅などは立地の良い所では部屋を埋めきらないと儲けが出ず、郵便物を突っ込んでくれるなとの張り紙もないからどの部屋にも住人がいるのだろうが、表札が一部しか出ていないと何とも隠れ住んでいるかのような趣がある。

 

逆に一軒一軒が広い山の上の新興住宅地の、どこに出るにも自動車が必要で折角駅から1kmくらいなのに不便極まる所でも案外出ていない。むしろ玄関が奥まっている。入りにくいので眼鏡をかけて確認してもどうやら無さそうである。いちいち上り下りを強いられることもあって配達するには辛い立地である。

 

ちなみにそういう所ではそもそも家の前が急な坂だったりするので自転車もあまり置いていない。行きはともかく帰りに毎回20kgそこそこの重量が追加されると思えば持つ気にもならない。庭と自動車だけだと外観がすっきりするので、それが目当てだろうか。

 

山の手の住宅地やガラが悪い所はともかく、集合住宅で表札を出さないのはそもそも借りている家でそのうち返すべきものなので名前を書かない、と考えるとしっくりくる。自分も数年してアパートに住むとなれば表札代をケチることにもなるだろうか。