地域枠と覚悟

昨日書いたこの記事の続きです。 

carrotman.hatenablog.com

 

 

 

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本日、私の記事を引用してこのような記事を書いてくださった方がいた。医療系学部には例えば医学部地域枠で入学するなら在学6年とお礼奉公9年合わせて15年を強い統制下で貢献することに費やす覚悟を持って、他のやり方でも相応の覚悟を持って入学せよというのは最もである。私自身学部に6年間在学し、無事卒業し資格を取れないリスクを受け入れ長時間労働に耐えつつ貢献する覚悟を持ち入学して今ここにいる。

 

しかしそれでも、実際にその選択をした人を否定するつもりはないが卒後9年の拘束を条件にするのは余りに酷であると主張する。例えばある大学の地域枠に相当する推薦入試では月15万円を6年間、総額1080万円をなんと金利10%/年もの高利で要不要によらず借りることとなる。担保になる物がある住宅や自動車のローンと性質が異なるとはいえこの金額をこの高利で、しかも収入も資産もほとんどない高校生へ貸し付けることを堂々と行う場所は他にない。

その借金と膨らみに膨らんだ利息を盾に、6年間大都市から遠く離れた市町にある特定の公立病院・診療所群の中の1つで延べ6年間と原則大学病院で3年間、合わせて9年間勤務させられる事となる。転職先が限られているので使用者から見てさぞ使い勝手がよいことだろう。

 

それに、その高利は育成にかかる税金の分を回収する懲罰的な金利だとして仕方ないとしてもそれを負担しての返済さえ認めないのが大問題である。医療従事者の需給に関する検討会 第35回 医師需給分科会 資料6令和2年8月31日『地域枠離脱について』(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000665193.pdf)

では『道義的責任は残る』ことを理由に制裁を加えることを提案し一部はすでに実行されているが、そもそも地域枠とリンクした奨学金は意思を有する者に対して貸与し、遠隔地での指定年限の勤務を条件に返済が免除されるものであるから年月を経て意思が無くなってしまえば返済して離脱する権利があるのは当然である。

実際『道義的責任は残る』という言い回しも契約上は離脱者に非が無いからこそと推測される。これが仮に強制労働を課しそれに対する報酬の先渡しをする契約であれば離脱は不当だが、そうではない。

 

診療科ごとにせよ地域ごとにせよ、偏在が問題になっているのは医師たちが新研修医制度などの下自由に選択していて、不足している領域では十分な見返りが期待できないからである。御恩あっての奉公であるから、やりがいのような非物質的な利益や移動コストも含めて受益を最大化するように動くことを責めることは不当である。国家の統制がより正当な形で強まるか、何かしらのインセンティブが必要なだけ出れば緩和されると考えられる。

 

しかし現実のところ地域枠にせよ診療科限定の枠にせよこのような条件をのみ実際に求められている意図を察して履行するものとして、より強い覚悟を持って入学してくれる人がいるからこそ私のような医学生が『相応の』覚悟で入学し在学できていることに感謝し将来の貢献に備えよく勉強して生きるのが正解なのだろう。