新しいワクチンへの忌避感

私はファイザーのワクチンを2回接種してしばらく経つ。8月になって、せっかく熱を出すリスクを冒してまで接種したのにその銀の弾丸(銀製という意味ではない)の効き目が早くも薄れつつあることに不満を感じている。

 

しかし極小のタンパク質と脂質膜とRNAその他からなる塊に文句を言っても仕方がないので、『コロナに打ち勝った証としての帰省』『帰省に挑戦するのが国民の役割』『緊急事態宣言下でも帰省できることを世界に示したい』などと五輪構文になぞらえた嫌味を言いつつ自粛する。帰省はすでに毎日している子供部屋お兄さんなので平時でも改めてはできない。

 

私がファイザーのワクチンを接種するにあたって医学教育にそれなりに染まっていることと原理の概略を理解できて不安がないことで接種を保留する考えは皆無だったが、世の中にはそうする人が結構いるらしい。啓発は他の方に任せて、特に若い世代でもその考えがある理由を少し考えてみる。

 

まず一つ、若年者がコロナに感染しても致死率が低いことがあげられる。これが天然痘みたいに20代に対しても数割の致死率を誇るのであれば我先にと接種しただろうけれど、今のところ0.1%に満たないので危機感が薄いのだろう。感染者数でみても東京で緊急事態宣言が出るころまでは少し落ち着いていた。

 

後遺症がまだ未確定ながら高率であるそうだが、後遺症に関する詳細な統計はまだないようである。それに対しワクチンの副反応による一時的な、発熱を主とする症状がこちらは当日や翌日に何割かの割合である。感染による健康被害のリスク(にワクチンで軽減できそうな割合を乗じたもの)とワクチンによるそれを比べて、前者を取る人が多くても驚かない。

 

また生物学に触れる機会が少ないこともあり、過去の医療に関する不祥事の記憶も加わって新しく世間に登場したワクチンに対する忌避感が強いことも考えられる。5Gへの接続やらステンレスをも引き寄せる磁化やら遺伝子の改変やらの噂まで出る始末である。電波や磁力はともかく遺伝子を勝手に作らせるのはウイルスの方だというのに。【20210805 コロナウイルスはレトロウイルスではないので逆転写を行いません。訂正いたします。間違った情報を流してしまい申し訳ございませんでした。】

 

そしてこれが一番重要だが、そもそもワクチンを接種するだけの余裕がないから接種しない人がいるのではないか。3週間か4週間かの間隔をあけて2回、全国くまなくあるとは限らない接種会場まで行って接種を受けて15分留め置かれて帰る時間や、発熱で潰してよい日がないのではないか。

ただでさえ景気はどん底で、バイトの募集が多かった飲食店での夜8時以降の就業ができていない。観光や娯楽の業界も焼けている。当月の家賃や電気代や食費を稼ぐために仕事から離れられないから接種しない、という人も多かろう。twitterを見ていてもそんな声が時々流れてくる。

 

損得勘定や知識はともかく、金と時間の問題は如何ともしがたいのではないか。非正規雇用でもワクチン接種に関係する時間分の給料が補填され職の継続にも影響しない仕組みがあればよいのだが。