文明の勝利

自作して使っている言い回しのひとつに、『文明の勝利』がある。これは時々ネットで見かける過激な自然屋を嫌う余り用いだしたもので、現代文明によって可能になったことを称えるものだ。例えば「天然痘を野生絶滅まで追い込んだ事は文明の勝利」「山奥で出てくるマグロの刺身は文明の勝利の賜物」「ニュージーランドから1万km弱海を越えて運ばれ店頭に並んだ巣蜜も文明の勝利の賜物」などと用いる。

 

人間の為に作られた現代文明はしばしば人間以外のものを手酷く扱う(時に人間もだが)ので畜産の特に大量育成が求められる養鶏に批判が多く、また潜入して撮影された映像は中々にインパクトが強いが、2か月足らずの育成で立派な肉ができて儲かるように改良されたブロイラーもまた文明の勝利の賜物の一つである。動物を食い物にすることを考えてばかりだが実際問題、動物を食い物にするといい思いができるので仕方がない。

 

現代文明礼賛の傾向が強い医学部の教育に染まってきた事もあって、有機栽培やら自然派生活やらに対する疑念が強くなっている。かつては公害病や余りにずさんな医療事故など現代文明の果実の取扱を誤ったゆえの災いが多過ぎてそれをニュースで知り、または被害を受けた事で自然大好きな高齢者が増えたのかもしれない。今はその類の事件が減った、もしくは報道されなくなったので素朴に現代文明が作るものを肯定する同世代が多そうだ。

 

しかしその数少ない例、21世紀の国内で文明の産物がもたらした災いの大きなものに10年前の原発事故がある。被害は大きく今なお続き、確かに過激な自然派に傾倒するには十分すぎるきっかけになりそうだ。しかし今更文明の利器を捨てられず、文明のお陰でできたものとはいえ面積当たりの生産性が悲惨な太陽光や風力にも活路を見いだせない現状化石燃料原子力を主とした電力の安定供給を願うものである。

 

 

 

 

 

 

 

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