分子機械のいのち

生き物は、人間は分子でできていると理解したのはいつであったか。

 

通っていたしがない公立小にある図書室の片隅にNHKスペシャルの「驚異の小宇宙 人体」のシリーズが置いてあった。私が確か小学校の4年であった2010年頃当時でもかなり古くなっていたので、今でも置いてあるかは分からない。

 

そこに書いてある難解な文章と美麗な写真や分子機構を示した想像図に魅せられたことが、今ここにいることに繋がっている。

 

筋収縮やホルモン分泌などの分子機構はある程度高校生物の教科書にも載っていることだが、普段認識されることは少ない。特に精神活動においては、それが化学物質の連鎖反応によるものと認識することを拒否されることもあろう。

 

人間は物質でできている以上、その活動は全て解明しきってはいないにせよ物質的なものに違いない。そのことを早期に触れられたことは幸運であった。『驚異の小宇宙 人体』は1989年ごろの著作であり今は更に詳しく分かっている事柄や否定された事柄は当然ある。しかしやはりその本が原点なのだ。

 

ものを考えてそれを話すこと、またはスマホの画面かキーボードを叩いて文字にすることも全て自分を成す分子の働きによるものだと触れていないと、コスモパワーだの重力波だのという詐欺商品の宣伝を鵜呑みにすることもあるだろう。

 

 

やや人間からは離れるが、同時期にネットサーフィンをしていて佐藤先生の「有機化学美術館」というサイトに当たった。見慣れない物質の解説は見慣れないなりに読み、ショ糖だの甘味料だの水だのといった見慣れた名前が出てくるページはふんわりとした理解のもと読んだものだ。

 

これまた棒と線の分子モデルで話が進んでおり、こんな世界もあるのかと感心した覚えがある。特にニトログリセリンのページは中々好きであった。ダイナマイトの原料となった爆薬が人体に入ると心臓に「発破をかける」のである。爆発ではなく別の分子機構で。

 

 

 

 

 

それにしても、小学生向けの図書室にあれが置いてあったのは不思議である。偉い人の献本か何かだったのだろうか、読んで影響を受ける子がいますように、と思いをこめた。