ネトーシス

細胞の死に方というのはなかなか劇的である。

 

派手に散って警鐘を鳴らすもの、バグを悟り自らを骨壺に収めるもの、分泌物と成り果てるもの。

 

敵を伝え介錯を頼むもの、壁と化すもの、逆にどろどろに溶けてしまうもの、危険物を隔離するもの。

 

色々あるが、今回はネトーシスについて少々。

 

ネトーシスとは好中球に特有の制御された細胞死で、そのときに好中球細胞外トラップが放たれる。英語ではNETosis。このNETというものは名の通りに網状をしていて、そこに付いている種々のタンパクとあわせて殺菌作用を示すのだとか。

 

この網の成分はクロマチン、要するにDNAの糸をまとめてあるもので、我々真核生物ではふつう核膜の中に大事にしまってあるものである。こんなものを放出してはたまらず死んでしまう。一番大切なものでさえ役目のためには投げ打つ、なかなか泣けてくるではないか。

 

我々は毎日使い捨ての細胞を使い捨てて生きていてそれを止めることなどできないが、そのリン脂質二重膜に包まれた有機ナノマシンに思いを馳せるくらいはしたい。